第157号   愛命園だより「あゆみ」   平成24年10月


小さな秋をあなたに
副園長 林 弘子

 今年で38回目となる秋の恒例行事ススキの配布日に、一本の電話がありました。八丁堀の福屋デパート前で取材をしてくださった中国新聞の記者さんからでした。
「園の歴史とススキ配布の回数が1年違うのはどうしてですか?」
 さすが新聞記者、よく気がつかれました。昭和48年の開設以来続けてきたこの行事、できなかったのは昭和62年です。まさに、ススキ採取予定日の8月31日、台風12号の暴風雨により、当時の男子棟の屋根がめくれて飛び去り、裏の水内(みのち)川の中洲付近に落下、それは、さながら小型飛行機が墜落した観を呈していました。園舎の反対側の国道や民家に落下していたらと思い、ゾッとしたものです。その後、復旧工事のため1ヶ月の休園を余儀なくされ、利用者をご家族のもとに送るマイクロバスがJR五日市駅へ出て行きました。
 愛命園にとって台風の被害は、このときが初めてではありません。昭和51年9月13日、台風17号による水内川の氾濫と堤防の決壊は、園舎に壊滅的ともいえる打撃を与えました。
 しかし、ほどなくしてあちこちの障害者施設の職員の方々がスコップを持って駆けつけて下さり、居室の床下に畳の高さにまでたまった川砂を取り除いて下さいました。本当にありがたかった出来事です。
 ちなみにこの年のススキは、9月7日に採取し、翌8日に配布がすんでいました。
 そもそも、なぜススキを配るのか、職員ですら最近入った人達は、よく理解しないでいるかもしれません。かつて施設は、入所すればすべて公費でまかなわれ、皆様のお世話になるばかりの存在でした。人からしてもらうだけではなく、何か私達にも世の中のためにできることはないだろうか、そう考えて始めたのがススキの配布です。都会ではまだ珍しい時期にススキをお配りして、一足早い秋の気配を感じていただこうというものです。
 はじめの頃は、「今夜はお月見です」で始まるチラシと共に、仲秋の明月に合わせてお配りしていたのですが、年とともにお月見の日もずれてきて、ススキの時期と合わなくなり、今は9月の初旬に実施しています。毎年、広島市の都心、八丁堀での市民配布と、日頃お世話になっている官庁、団体、病院などにお届けする組との2班で出かけています。採ってきたススキの整理と翌日の配布には、毎年利用者のご家族の方々が応援にきて下さり、大変助かっております。
 ところで、この行事は、実施後に大きな楽しみがあります。ススキを受取られた方々からのお礼状です。その日の内にファックスやメール、2〜3日してハガキや絵手紙などといろいろですが、届いたそれらは、園内の掲示板にはると同時に、園内放送で皆さんに聞いていただきます。
 そして又、それらのコピーは、お手伝いいただいた家族会の方々や、ススキに添える秋の花を提供して下さったご近所の方々にも、お礼状に添えてお送りし、皆様のあたたかいお気持ちを分かち合うのが恒例になりました。
 ここで、いただいたお便りの一部をご紹介させていただきます。
 『本日はススキをお届けくださってありがとうございます。クリニックの待合室に活けて皆様に秋を感じていただきます。これからもお元気でお過ごしください』
(中区 Kクリニック院長先生のメール)

『愛命園の皆様へ 今年も残暑きびしい中、秋のおとずれのプレゼント配布ご苦労様でした。毎年この時期になると“そろそろかな!”って心待ちするようになりました。
  昨年は残念ながら逃してしまいましたが、今年は皆さんの元気な手からススキをいただき嬉しかったです。家に帰り早速玄関に飾り笑顔をいただきました。ありがとうございました。ススキと共に逢えることを楽しみにしています』  (広島市 65才主婦の方)
 
『去る9月5日所用で八丁堀まで外出したところ、デパートの前でススキとガマをいただきました。思いがけないプレゼントに胸がいっぱいでした。今年は特別なお月見になりそうです。皆様、まだまだ残暑が厳しいのでくれぐれもご自愛なさってお暮らし下さいませ』
(中区 76才おばあさん(自称))
 
『いつもテレビのニュースで見て「いいなー」と思っていた秋のプレゼント、今日は私にもいただき、嬉しい!!』
(東区 A.Iさん)
 『今日、八丁堀でススキをいただきました。一言お礼を申し上げたく、筆を取りまし  た。今日一日持ち歩いていましたが、たくさんの人にうらやましがられました。おかげ様で我が家にも秋が訪れました。いつまでもお元気で』       (東区 A.Sさん)
 
『愛命園の皆様こんにちは。先日は、原爆以来の生残りの友人と月一回会うのに、福屋の前集合でした。その時、お目の不自由な方たちが、秋の花やススキ等を皆に配っておられ、近づきましてつい、「友達もいるんです。3人分下さい」と声をかけ、あつかましいお願いをしてしまいました。すみませんでした。友達も喜んでいました。昨日敬老会に参加し、友人より「住所がわかればお礼を言って下さい」と、又その時の愛命園の皆様のことが話に出ました。その節はありがとうございました。今もあの時のススキ、元気でいますよ』
(府中町 Kさん、Dさん、Yさん)

 この行事を始めた頃には、みんなで休耕田に出向いてススキを集め、昼時分になると園の厨房で作ったお弁当を公用車で運んで現地で食べ、まるで遠足のようでした。それが、重度化、高齢化の進んだ現在、現地まで行ける利用者はごくごくわずかになりました。
 しかし、心待ちにして下さる多くの方々を裏切りたくないというのが率直な気持ちであり、利用者が山に行けないからもうやめようという発想にだけは、今後とも到達して欲しくないというのが私の願いです。
 私達の施設がこうして今あるのは、多くの方々の支えがあったればこそです。ほんの小さなことかも知れませんが、都会の喧騒の中で、毎年小さな秋の訪れを届け、そのことによって、利用者も職員も、皆様のあたたかいお気持ちにふれさせていただける、そのことにたずさわれることは、施設職員冥利に尽きると私は思うのです。



愛命園家族会より
岡本 悦子

 暑い暑いといってた季節もはや秋になり、こうべをたれていた稲もすっかり刈り取られて新米のおいしい時期になりました。
 夏帰省の家族会のときに園長先生から入院時の対応のお話がありました。お預けし、おまかせし何も考えていなかったことを恥じました。
今の医療制度の中では、受診、入院となるとすぐに入院計画書に治療内容の説明を受けます。同時に退院計画書も説明を受けます。説明を受けた方は同意のサインを求められます。
家族の意向がわからないままでは職員の方は困られるのではないでしょうか。身体の弱い障害者をもつ身として、何時何が起きるかわかりません。
廊下から垣間見る施設での医療行為の必要な方の多い事、大変だと思います。食事にしても刻み食から、半固形食まで個々にあわせた食事作り、それを介助で食べさせてもらう等すべてを愛命園では受け入れてもらってます。職員の皆様に感謝、感謝です。これからも宜しくお願い致します。



恒例の夏まつり
生活支援員 徳島 友明

 8月11日土曜日に恒例の夏祭りが開催されました。アトラクションとして、水内神楽団の皆さんに来ていただきました。
また、今年の試みとして、アトラクションに集中していただくために夜店(ゲーム)を無くしました。さらに舞台の前にかぶりつき席を作りました。そのせいか、いつもなら途中で帰ってしまう利用者の方も雰囲気を楽しまれていました。近くに席を作ったおかげで見やすくなったなどの声も聞くことができました。
水内神楽団さんの神楽は、太鼓や笛の音も響いていてとても心に残る舞でした。
最後は、全員参加の盆踊りをしました。炭坑節と阿波踊りで締めくくり、利用者・スタッフ一同楽しみました。去年に引き続き屋台のメニューも豊富で、美味しい酒が飲めたと利用者のみなさんも喜んでおられました。
 今年も福祉専門学校や富士産業の方々にボランティアとして多数手伝っていただきました。本当にありがとうございました。



平成24年度旅行
生活支援員 沖田 幸久

 9月中旬から10月中旬までの1ヶ月間で6回に分けて恒例の旅行が実施されました。毎年、旅行先の選定にスタッフは頭を悩ませます。今年の旅行先選定にあたっては@車中でのガイドさんのお話A旅先での料理Bお土産等の買い物C夜の宴会D温泉。以上5点を楽しむポイントとして考えプランを利用者に提示し選んでいただきました。また、道中いろいろと楽しませてもらうためバスガイドを日帰りプランにもお願いし、車椅子利用者が増えたため、車椅子ごと乗れるリフトバスを用意しました。その結果、利用者の重度高齢化の影響でしょうか一泊ではなく日帰りの希望者が増え、一泊も近場でのんびり過ごすことを希望される方が多く、以下の旅行先となりました。
 今年の旅行はフジトラベルさんにお世話になりました。いろいろな変更点に対応していただきました。ありがとうございました。

1.日帰り果物狩り 9月13日(木)
 三原の果実の森公園にて食べ放題のぶどうをほおばり、世羅ワイナリーでステーキやハンバーグのランチを堪能しました。たわわに実った木の下、旬のぶどうはやはりおいしいですね。天気も良く、お土産もたくさん買えて皆さん満足そうでした。車椅子利用者のためにリフト付きバスを初めて利用しました。

2.塩工場と清酒工場見学、金毘羅の一泊旅行。9月19日(水)〜9月20日(木)・9月26日(水)〜9月27日(木) 同じ行程を2回に分けて実施しました。
 しまなみ海道を経由して大三島へ、海の幸の昼食を楽しんだ後は塩工場の見学をしました。そこで食べた塩ソフトクリームは「おいしい!ほんま塩じゃのぅ」としばらくはその話題で持ちきり。近くの海に行き、心地よい潮風にも吹かれました。四国に渡り、金毘羅近くの宿に着いたらお待ちかねの温泉と宴会です。皆さん「いったいどこに入るの?」的な量のごちそうを食べ、カラオケで大いに盛り上がりました。
2日目は宿の近くの清酒工場へ。工場内の大きなくすの木の前で記念撮影。無料なのをいいことに試飲をどんどんお替りしているスタッフ、おいおい大丈夫?その後は名物のさぬきうどんを食べ一路愛命園へ。バスガイドは、1班は浅井さんで2班は岩田さん。お二方とも観光地の知識や話題が豊富でおしゃべりがとても楽しい。お天気にも恵まれいい旅行になりました。

3.日帰り下松健康パーク 10月4日(木)
 山口県の下松健康パークで温泉と食事そして芝居の観劇をしました。トロン湯温泉に浸かり肌がスベスベになった後で芝居の観劇、内容は人情ものの大衆演劇です。アドリブも入り熱演でしたが、これから盛り上がるだろう時に帰りの時間の関係で途中退席しました。話が良く分からず少し残念、歌謡ショーとかの方が楽しめたでしょうかね。この班もリフト付きバスを利用しました。

4.日帰り買い物 10月11日(木)・10月15日(月)2回に分けて実施。
 「遠くに行くのはしんどいし、ちょっと欲しい物を買うだけで十分よ」とおっしゃる方のためのプランです。園の公用車で近くのショッピングモールに行き、買い物と食事を楽しまれました。



砂谷中学校福祉体験学習
生活支援員 河普@雄太

 10月11日(木)、愛命園に砂谷中学校生徒6名が福祉体験学習に来られました。
毎年行われていることですが、やはり相変わらず緊張で顔に余裕が無い感じでありましたが、それは中学生ではなく私自身が一番緊張していたのかな…と、感じます。
 体験では、1係、2係、3係の活動を一通り行ってもらい、とても興味がありそうだったのが3係の「貝通し」でした。中学生のみなさんには目をつぶって行ってもらい、「難しいな…。穴に入らん。」など、いろんな表情が出る体験になったと思います。
 また、歩行訓練士(伊藤章支援員)によるアイマスク体験を行ってもらい、アイマスクをしての手引き歩行、食事体験などをしてもらいました。
 生徒達は、「怖い…」「あっちに行くよって言われてもわからんよ…」など、本音での言葉が飛び交うことで、とても良い体験しているなと感じました。「目が見えないことは本当に怖いんだな…」と実感して頂いたことは生徒達にとって、とても良い影響だったのではないかと感じました。
 少ない時間での体験学習でしたが、少しでも福祉とはどんなものか?ということが分かっていただけたことが、障害者への理解と、これからの福祉の未来に繋がっていただけると嬉しいなと思う福祉体験学習であったと思います。 



支援1係活動報告
生活支援員 森野 香菜子

 1係では夏から秋にかけてたくさんの活動を行いました。
 まずは夏の思い出から。夏といえば、アイスクリーム、海、バーベキューなど連想するものは人によって様々ですが、1係の夏と言えば・・・畑に育ったすいかや茄子の収穫にそうめん流し!
 利用者と職員とで育てた作物は、猿や狸に横取りされること無く、無事に収穫することができました。春から汗びっしょりになりながら手入れをした畑。そこにたくさん実った丸く大きなすいかと長細く色艶のよい茄子。自分たちで育てたすいかをおいしそうに頬張る姿にこちらまで嬉しくなりました。
 もうひとつの夏の風物詩、そうめん流し。副園長提供の竹を使ってそうめん流しの樋を手作りしました。樋の周りに利用者の皆さんに集まっていただき、スタンバイOK!次々に流れるそうめんを利用者と職員が箸で捕まえては食べ、また箸で捕まえて…。冷たくてつるつるのそうめんを楽しく味わいました。今年もひと夏の思い出がたくさんできました。来年はどんな夏になるのかな?
 最近では、ドライブや芋ほりと焼き芋を楽しみました。
 ドライブは10月9日に砂谷牧場へ。牧場、といえば牛のイメージですが、今回は芝生に出ていた山羊と触れ合いました。恐る恐る触る人、興味を持って積極的に触る人、反応はそれぞれですが、普段手に触れることのない山羊の毛の感触を楽しんでもらえたようでした。笑顔もたくさん見られ、楽しいひと時となったようです。
 最後に、芋ほりと焼き芋会のことを紹介します。10月11、15日に畑にできたさつまいもを収穫しました。大きくなったたくさんのさつまいもに利用者の顔にも笑顔が浮かびます。そのさつまいもで10月18日に焼き芋会を行いました。朝9時30分から職員の手で火を起こし、新聞とアルミホイルに包まれたさつまいもを焼き、頃合を見て放送で利用者へお知らせすると、楽しみにされていた皆さんが集まってこられました。あつあつほくほくの焼き芋を手に嬉しそうな表情!たくさん食べていただきました。
 これから冬に向かってますます寒くなっていきますが、利用者の皆さんには、体調には気をつけて活動をしていただけたらと思います。



木漏れ日
リレー随想
事務員 吉田 千夏

 今私の一番好きな時間は、姪と過ごす時間です。
 私の大好きな姪っ子を少し紹介します。
 現在、2歳9か月。食べることが大好き、歌うことも大好き、英語でお話もできます。
嫌いなことは運動です。そんな姪がとにかく可愛いです。“おば”バカですね(笑)
その私の気持ちを知っているのか、私の傍から離れません。抱っこも手をつなぐ時もママではなく私です。時には私と姪だけの秘密の話もします。
 私を友達と勘違いしているのかもしれませんね。
 それでも「ちいちゃん大好き」の一言でどんなに疲れていても元気になれます。
そんな姪から私も気付かされることがあります。他の子供に順番をぬかされても「どーぞ」と笑顔で言える姿、純粋に「ありがとう」と言える優しい気持ちに我が身を振り返り背筋が伸びます。
 これからも、ずっと今の気持ちを忘れず優しい子に育ってくれればと願っています。そして、これからもママには内緒の話をしようね。



【寄せられた善意】
[平成24年7月26日〜平成24年10月22日]
(順不同・敬称略)

《現  金》
風呂井 潔      山下 和義
宮本 進       佐々木 浩二
藤井 貢       和田 信昭
大成 敏正      新庄 敏之
大原 佳子      渡辺 清恵
森井旅館       青原 清美
清水 光明

《現  物》
桃          向井理容室
サージカルマスク   小島薬局
ねぎ         野上 好子
飲料         湯来西公民館
しょうゆ       谷川 隆子
新米・栗・たわし   奥元 敏之
もち米        湯来東小学校
竹          林 弘子

《奉仕作業》
畳表替え       広島畳協同組合

支援課長 長峯 公明
さわやかな空気と澄み切った青空。この上ない秋晴れに恵まれた9月22日(土)秋分の日、広島畳協同組合から13名の方々が見えられ、4室30畳の表替えをしていただきました。毎年9月24日「畳の日」前後に社会奉仕活動として続けてこられ、今年で10回目を数えたそうです。
 普段は機械を使うところも畳を持ち帰ることができないので、ほとんどが手作業。縫い針や包丁の扱いなど、素人目にも無駄のない鮮やかな手さばきは、「職人さんの美学」とでもいうべきものを感じさせてくれました。
新しい畳が敷かれた部屋の空気は、森林浴の効果があるとか。利用者の方も心地よい眠りについたことでしょう。お忙しい中をお越しいただき、本当にありがとうございました。

《朗読奉仕》
どんぐり会    湯来朗読グループ

※いつも暖かいご支援ありがとうございます。諸般の事情で掲載を控えさせていただく場合もございます。

人の動き

《退  職》
10月19日付
非常勤生活支援員  田中 崇博


『園まつり』開催のお知らせ
今年も恒例の『園まつり』を開催いたします。

日時  平成24年11月23日(金)
    10時〜14時半(雨天決行)
催し物 ・バザー ・利用者作品展示
・模擬店(うどん・ちらし寿司・おでん等)
アトラクション ・和太鼓・よさこい・紙芝居
・ハーモニカ、オカリナ合奏 等

 上記の予定で行いますので、ご多忙のこととは存じますが、ご近所・ご友人などお誘いあわせの上、ご参加ください。多数のご来園を、利用者・職員・関係者一同心からお待ちしております。